先代が残してくれた曽爾村の森林を、次世代に繋げていくお仕事
業種
森林組合職員(業務課)
募集期間:
2022.12.01~
奈良県には、「吉野林業」という、約500年前から続く伝統産業があります。
吉野林業は全国の林業の模範になった歴史があり、吉野林業独特の育成方法によって生み出される杉・桧は、一般的な杉・桧よりも緻密で均一な年輪幅を有しており、節が無いのが最大の特徴。その美しさから、「吉野杉」「吉野桧」と呼ばれ、全国的にも・歴史的にも価値が高く、人気の材になります。
一般的に、吉野林業を行っている地域は、広義的には奈良県の吉野郡地域とされ、もっと狭い地域で見ると、川上村・黒滝村・東吉野村の3村に、その歴史の深さを感じることができます。
日本の林業の創成期でもある室町時代から、江戸・明治・昭和の戦後まで、日本の林業は隆盛を極めますが、その後、外国産材の輸入が自由化されると、国産木材の需要と価値は下落の一途を辿ります。
林業が栄えていた時代には、多くの人が山林を有し、自身で林業を営み、暮らしていました。曽爾村も例外ではなく、村の面積の約86%が森林である現在の曽爾村を見ても、かつての先祖たちがこの村に、多くの木々を植えて林業を営んでいた歴史を垣間見ることができるのです。
今回の求人は、そんな先代たちが現代に残した曽爾村の森林を守り・育て、次世代につなげていくお仕事のお話です。
曽爾村の森林について
───個人的な話なんですけど…私、杉・桧が大好きなんです。曽爾村って、どこを見渡しても針葉樹の山に囲まれていて、とても美しいですよね。これって、吉野林業と関係はあったりするんですか?
「杉・桧が好きなんて、なかなか珍しいですね…(笑)。曽爾村に今ある木々は、かつては吉野の実生苗を植えたものだと聞いたことがあります。林業が栄えていた時代の、私たちの曽祖父や、それよりもっと前の先代たちが植えてくれた木々が今も残っているって感じですね。」
そうお話するのは、曽爾村森林組合に勤める奥田 昌宏(おくだ まさひろ)さん。
───何十年も何百年も前からある木々なんですね。でも、なぜ伐らずにこんなに残っているのでしょうか?
「いい質問ですね。どこの地域の山林も同じだとは思いますが、曽爾村も例外ではなく、昔は村民の多くが林業をしていたんですよ。当時は林業ってすごく儲かる時代だったから、孫や、その先の子孫たちが木とお金に困ることがないようにって、先代たちが沢山植えてくれたんでしょうね。けれど時代は変わって国産材に需要が無くなると、林業の担い手が一気に減り、山林を所有している人々もどんどん高齢化していった。それで、山を管理する担い手が不足し、かつて植えられた木々がそのまま残ってしまっている状況です。」
───なるほど。全国的にも山林放棄って、問題になっていますよね。ですが、曽爾村の山を見ていると、そんなに「放棄」されている山には見えません。森林組合さんの仕事のおかげなのでしょうか?
「ありがとうございます。曽爾村の森林を管理する組織としては、いくつかあるんです。まずは私たちのような『森林組合』、次に、村内の大字(たいじ)※で持っている山を管理するための大字ごとに構成された『生産森林組合』、そして『山行きさん』とも言われる自伐型林業を営んでいる方々かな。」(※曽爾村には9つの大字(集落)が存在する)
───山を管理していくにも、そんなに多くの人が関係してくるんですね。
「村内のこういった組織だけでなく、村外にも曽爾村の森林を所有している人がいます。令和3年度時点では、曽爾の森林を所有している森林組合員さんは、村内外を合わせて556人もいるんです。」
───そんなにたくさん?!そもそも、『森林組合』って、どんな組織なんですか?
「私も複雑で把握しきれていない気がするのですが…(笑)。簡単に言うと、森林の所有者さんたちが出資して設立された協同組合のことです。所有者=組合員という認識ですね。『森林組合』は、組合員さんたちが所有している森林の管理・整備をしている組織になります。所有者さんたちの山作りをお手伝いするのが、森林組合の役目ですね。
一方、大字ごとに構成されている『生産森林組合』は、組合員さん自らが管理・整備などの労働を行う点に違いがあります。しかし、曽爾村の場合は、『生産森林組合』の皆さんも高齢化が進み、手入れが遅れている状況です。そういった管理の手が行き届いていない山の木も、今後は森林組合として管理を手伝っていきたい気持ちはありますね。」
森林組合の主な仕事
曽爾の美しい山の管理に欠かせない森林組合の存在。
具体的にどんなお仕事があるのか聞いてみました。
「『森林の管理・整備』と聞くと、木を伐ったり植えたりする一般的な『林業』を想像される方も多いのですが、実はそれだけではありません。大きく4つに分けると『整備事業』『木材流通促進事業』『事務作業』『その他』となります。」
■整備事業
・主に杉・桧の植林地の間伐
・漆の発祥地である曽爾における、漆の植栽地や伐採跡地の下刈り
・伐採計画のために必要な山の地形や面積の情報を数値化する測量
・山の中の境界確認のための山林調査
・獣害ネットの施工
・山林の草刈り
■木材流通促進事業
・小径木、原木の即売会
県内や周辺他府県では珍しい、樹齢が低くまだ細い木(小径木)や原木の即売会を運営し、間伐材の利用機会として組合員さんから喜ばれている。
■事務作業
・補助金事業に係る書類作成等の事務
■その他
・作業講習の手配や各種林業機器・道具の販売など
───私が想像していた業務内容とは全く異なりました…。こんなに多岐に渡る業務を行っているとは。
「こんなに沢山やることがあるのに、本当に人が不足しているんです。人がいたら手を伸ばすことができる山林もまだまだあるんですけどね。とにかく人手が足りない。」
───現在従業員は何名いらっしゃるんですか?
「正規職員・非正規職員合わせて3名です。整備事業などを担う現場作業員と、書類作業を担う事務員は基本的に分けていますが、必要な場合には事務員の方にも現場に出てもらうことがあります。」
───こんなに沢山の業務があるのに、その人数で…?!
「そう、少ないでしょ(笑)。かく言う私も、森林組合に勤めて3~4年になりますが、一度辞めてまた戻ってきたんです。」
───どうして戻って来られたのですか?
「やっぱり人手が不足している分、一時期は仕事がしんどくなってしまって。一度は離れてしまったのですが、『このままでは絶対潰れてしまう』と思い直し、再度ここで働き始めました。組合員の皆さんも良い人ばかりですし、組合員さんから『ありがとう』って感謝されるとやっぱり嬉しいですからね。人がいなくてしんどい部分は今も変わりませんが、『組合員さんから頼れる存在でありたい』という気持ちを持って頑張っています。」
───しっかり想いを持たれてお仕事をされているんですね。
「そう言われると…うーん。恥ずかしいですが(笑)。だけど、この村の放置された山林をどうにかしたいって気持ちは、しっかり持っていますね。山の奥の方にある採算が取れにくいところの木も、優先的に管理していきたいし、まだまだこの村の山のためにやれることは沢山あるはずなんです。ただ、森林組合の人手が足りない!!」
思っていたより、森林組合の人手不足問題は深刻なようです。
奥田さんが想いの丈をお話しているところ、事務所の奥で話を聞いていた事務員の方が、口を開いてくれました。
「奥田さんの言う通り、今の森林組合には人手が足りていません。一見、専門職のようにも見えて経験者でないと難しい仕事かとも思われますが、最初はみんな未経験で入っています。僕自身も林業事業体で働くことは全くの未経験ですが、専門用語が多く出てくる補助金関係の書類作業を今ここでしています。」
そう話すのは、奈良県御所市出身の田原さん。一度東京に出ていたところ、「奈良でなにかのサポートをしたい」と思い直し、Uターンをしたのだそう。
───田原さんにとって、森林組合のお仕事って、どんなお仕事ですか?
「曽爾村の森林組合員さんは500人以上。その約500人の方のサポートをしていることが大きなやりがいですね。組合員さんはほとんどの方がご高齢なんです。そういった方たちに、自身の森林の管理にかかる補助金の申請とか書類作成をお願いしても、大変じゃないですか。紙1枚作成するにも不都合が出てくると思うんです。そんな場合に、僕のような書類作成を中心に事務をする人間がいると、すごく助かるんじゃないかなって。組合員の皆さんのサポートを、陰ながらしているというのが、この仕事の醍醐味ですかね。」
現場作業や事務作業など、主担当の業務は異なれど、「曽爾村の森林のため」「組合員さんのため」という想いが根幹にあってこそ、やりがいを感じながらお仕事をしているようです。
───今回の求人にあたって、どんな方に来てもらいたいですか?
「先ほど田原さんも言っていたように、この仕事は初心者でも大丈夫です。初心者の方は、最初は不慣れが続くかもしれませんが、私自身も先輩の姿を見て覚えていきました。あ、でもスタミナはいるかな(笑)。向上心と、スタミナがあると良いですね!」
───事務をやられている田原さんはどうですか?
「補助金などの重要な書類作成に関わることが多いので、真面目な方は向いているかな。日々の業務を計画的に着々とこなすことができる人。あとは、思っていたよりも人とコミュニケーションを取ることも多いので、曽爾村の森林に興味関心を寄せて、いろんな関係者とコミュニケーションを取ることができると良いですね。」
曽爾村の森林を守り、育てる。
かつて林業が栄えていた時代に、名前も顔も知らない、私たちの先代が植えてくれた木々。
1年を通して緑の葉がなる常緑針葉樹である杉・桧は、いつ見ても変わらない曽爾村の美しい景色を生み出してくれています。
そして、その森林が与えてくれるのは、美しい景観だけではありません。
森林が健全に保たれることによって、山が雨をたくわえ、水を浄化し、深く張った木々の根は土壌流出を防ぎ、そして二酸化炭素を吸収してくれます。
しかし、森林の管理を放置してしまうと、土砂災害のリスク、生物多様性の崩壊、獣害…など、さまざまなリスクが生じてきます。
普段の生活で、触れることが少ない森林ですが、実は私たちの生活を支え、恵みを与えてくれている、とても重要な存在なのです。
森林を管理し、さまざまなリスクから私たちの生活を守る。
そして、森林を所有している組合員さんの手助けをする。
そんな大切な役割を担っているのが、曽爾村森林組合です。
先代が残してくれた曽爾村の森林を守り、次世代のために育てる。
この村の林業の未来を担っていく熱意をお持ちの方、ぜひご応募ください。
募集要項
募集終了