曽爾村の求人情報

農業振興に向けて奔走しながら「生産者・消費者・村」の三方良しを創り繋ぐお仕事

業種

総合職

募集期間:

2024.07.19~

村一面に広がる田園風景。
ハウスいっぱいに実るみずみずしい大玉トマトや、ほうれん草。
村のあちこちで栽培されている多品目な野菜や薬草───。

 

村を流れる豊かな水源と、高原地帯特有の澄んだ空気の恩恵を受ける曽爾村では、古くから「農業」が生業として営まれてきました。
曽爾村を歩いていると目にする沢山の農作物や農家さんたちの姿は、日本の原風景そのものであり、曽爾村になくてはならない、日常の景色の一片です。

 

しかし、全国的に問題視されている地域の過疎化と高齢化による、耕作放棄地や農家の後継者不足。もちろん曽爾村も例外ではなく、このまま対策を講じなければ、美しい農村の景色や文化が衰退の一途を辿る危機に晒されていました。
その危機に立ち向かうために設立されたのが、「一般社団法人曽爾村農林業公社」(以下、「農林業公社」)です。

 

曽爾村の農産物と、それらを栽培する農家さんたちを陰ながら守り導く存在の農林業公社とは、一体どんな団体なのか。
今回の求人は、曽爾村の農業を支える彼らに関するお話です。

 

農林業公社の成り立ち

 

 

旧小学校を改装した「曽爾村地域総合センター」に事務所を構える、農林業公社。

2023年に曽爾村役場企画課から農林業公社の事務局長として出向している髙松さんに、その成り立ちを聞いてみました。

 

「農林業公社は、2016年6月に設立されました。会社が設立された発端は、2014年に国が定めた『まち・ひと・しごと創生総合戦略』です。この中で、『自治体ごとに知恵を絞って地域の戦略をまとめたら国が支援をしますよ』という枠組みができ、これを機会に、農業に関する戦略作りを経て立ち上がった組織になります。」

 

───「まち・ひと・しごと」に関わる戦略なので、多岐に渡る議論が当時なされたとは思いますが、農業に関する戦略作りには、そもそもどんな背景があったのですか?

 

「曽爾村はかつて農林業が基幹産業として栄えていましたが、それが衰退の危機に晒されていました。過疎化が進む原因として、『農林業は儲からない』という理由で、他の地域へ仕事を求めて出ていく人も多く、農家さんの高齢化と後継者不足が進行する悪循環になってしまっていました。そのため、曽爾村の農林業を存続させていくための打開策を考えていくことが、戦略作りの第一歩でした。」

 

───役場ではどのように戦略を作っていったのでしょうか?

 

「役場だけで何かできるのか、と言われると実はそうではなくて…。地域には農業を支えるための「農業協同組合(以下、「農協」)」があるのですが、30年ほど前に全国でも最も早く広域合併(曽爾村農協⇒宇陀郡農協⇒奈良県農協)されてしまった農協なんです。

広域合併されてからは、奈良県全体の農業を見るための組織になってしまい、『曽爾村のために』と曽爾に特化した取組みを実施するのが難しい状態でもあったんです。

役場だけでも難しい。農協だけでも難しい。そんな状況のなか、官民連携して農林業を盛り上げる一般社団法人を立ち上げようというのが戦略作りの根幹になり、農協を含む複数の組織で構成された第三セクターの組織作りをしていくことになりました。組織づくりにあたっては、構成員となる組織だけではなく、地域住民さんたちにも携わってもらったんですよ。」

 

───住民さんも?どのように関わっていたのでしょうか?

 

「住民同士、集落同士、役場職員同士で意見を出し合うワークショップを複数回実施しました。『今あるものにどう価値をつけていくか』『価値を得ることで生産者をどうフォローするか』という論点を中心に、様々な立場の方々から意見を伺いましたね。住民さんのなかには移住者の方もおられて、『外から来た人の目線』を取り入れることもできました。」

 

───現場の声を聞くことはとても大切ですよね。様々な立場の人を巻き込んで作られた戦略は、結果としてどのような内容にまとまったのですか?

 

 

「農業・林業・薬草プロジェクト・地域イノベーションの4つの柱を重点的に行う組織としました。」

 

───地域イノベーション?

 

「曽爾村では、9つの集落のうち5つの集落でそれぞれの地域資源を生かした特産品を製造・販売しているのですが、それを『地域イノベーション』と呼んでいます。農林業公社を立ち上げるよりももっと前に、奈良教育大学との連携で生まれたものだったのですが、農林業公社が立ち上がった暁には、農業の振興はもちろん、いずれ地域の雇用創出や創業につながる『地域イノベーション』の促進にも力を入れて取り組んでいくことになりました。」

 

───そういうことなんですね。ちなみに、戦略としてはどのような形でまとまったのでしょうか?

 

「戦略を立てた時点では、近い将来、耕作放棄地・後継者問題も視野に入れながら一次産業の維持・衰退抑止の対策を講じるつもりではいました。ですが、先の論点にもあったように『今あるものにどう価値をつけていくか』『価値を得ることで生産者をどうフォローするか』という点を重視していたため、まずは二次産業的な製品のブランド化・流通支援を最初は重点的に行う戦略にまとまりました。全国にも数多の農林業公社がありますが、流通支援まで行うのは、全国的にもかなり珍しいんですよ。」

 

「販売」と「生産」をサポートする、農林業公社の仕事内容

 

───農林業公社が立ち上がって今年で8年となりますが、発足当時に「近い将来」と予測していた、耕作放棄地・後継者問題の対策も始まっているのでしょうか?

 

「そうですね。『農業振興事業』として販売部門と生産部門の2つを中心に取組んでいるのですが、耕作放棄地・後継者問題の対策については生産部門の取組みになります。

設立時から、『今後農地が荒れてくる』『後継者不足が浮き彫りになるだろう』と予測していましたし、一方で、『移住して農業をしたい』という人も増えてくることも予測していました。」

 

───たしかに!「農業したい」と移住相談にいらっしゃる方、とても多いです。

 

「新規就農者はいつ来て下さるか分からないので、農地が荒れていくのを未然に防ぐ必要があります。

特に米作りに関して言うと、高齢化で引退を視野に入れている農家さんも多いんです。今まで長年やられてきた田んぼを、引退と同時に手放すのではなく、引退される前に農林業公社へ声を掛けてもらい、農林業公社が田植え・稲刈りの作業などを受託する農作業受託の仕組みをまず作りました。そうすることで、引退前の農家さんからお米作りのノウハウを教えていただくこともできますし、お米を植えない場合でも田んぼを耕しておくことができ、すぐ作れる環境を常に保つことで、いつでも新規就農者を受け入れる体制が整うんです。」

 

───農作業受託は今どれくらいの面積をやられているんですか?

 

「約70アール(7反)分の田んぼを受託しています。また、農作業受託以外にも、同じくらいの面積分の田んぼを直営していて、そちらでは農地を借りて農林業公社がお米を栽培し、販売するまでを一貫して行っています。」

 

───今やられている場所以外にも、手を付けるべき田んぼはまだあるんですか?

 

「あります。集落によっては荒れてしまっている田んぼが多くなってきているので、村全域に支援を広げていく体制を整えていきたい局面ですね…。農業で村を盛り上げていくために、農地を守っているのが我々の仕事だと理解してもらえると、ありがたいです。」

 

───「農地を守る仕事」をするうえで、持っておくべき意識などはありますか?

 

「曽爾村では先祖代々お米作りを営まれている方が多いので、こういった仕事を広げていくうえでも、『曽爾米の誇りとこれまでの農法を理解しながら、その農地を引き継いでいく』、そんな意識を持てる方と一緒に働けると、我々はもちろん、引退を考えているご高齢の農家さんたちもきっと安心してくれるんじゃないかな。」

 

───「販売部門」ではどのようなサポートをされているのでしょうか?

 

「お米と野菜に関する販売サポート事業です。お米に関しては、農林業公社の設立と同時に『曽爾米ブランド化協議会』を立ち上げたんです。曽爾村は水がとても綺麗なこともあって、曽爾村の水を使って作られるお米はとても美味しい、と評判なんですよ。

ただ、農協を通して販売をすると、『曽爾村産のお米』ではなくて、どうしても『奈良県産のお米』になってしまうんですよね。収支で見ても赤字になっている状況だったので、独自にブランド化を進めて『曽爾村のお米は美味しい』という認識を拡げ、黒字化させるための協議会を発足しました。」

 

───最初に仰っていた、「今あるものにどう価値をつけていくか」という観点でのブランド化ですね。

 

「そうですね。100%有機肥料、農薬も出来る限りおさえて栽培をする特別栽培を徹底し、曽爾村のお米だけを曽爾村で精米することで他と差別化を図った『曽爾米(そにまい)』をブランド化し、流通させています。」

 

 

───野菜の方の販売サポートはどのようなことをされているのでしょうか?販売サポートまで行うのは、全国的にも珍しいんですよね?

 

「奈良市内の飲食店に曽爾村の野菜を届ける『曽爾テロワール便』と、一般消費者向けに野菜と加工品の詰め合わせセットを月1~2回配送する『そにのわ便』を行っています。加工品は先ほど紹介した『地域イノベーション』の商品を主に詰め合わせているんですよ。」

 

───定期的に野菜が出荷できる仕組みになっているんですね。

 

「生産者さんや新規就農を目指している方にとって一番心強いのって、販売ルートがあるかどうかなんです。飲食店や消費者に直接届けるこの取組み自体が、生産者さんの収入を高めると同時に、曽爾村の農業の発信にも繋がると思っています。

ですが、ある程度まとまった出荷数を出してあげなければ生産者さんのためになりにくいので、市場や八百屋さんなど、BtoBである卸売面の販路拡大も目指しているところです。」

 

とことん農家さん視点
販路開拓こそが農業振興に繋がる

 

 

ここまで事務局長である髙松さんにお話を伺いましたが、2023年秋から農林業公社で働き始めた日下部(くさかべ)さんにもお話を伺ってみました。

 

日下部さんは山口県で有機農業の研修を受けていましたが、将来就農した際の販路面での有利さから、京阪神に近い故郷奈良での新規就農を目指して移住先を探していたところ、農林業公社の求人に出会って就職をされました。

 

───日下部さんは、なぜ農林業公社に勤めることになったのですか?

 

「もともと僕は農業と関係ない仕事をしていたんですが、『何をしてお金が入ってくるのか』はっきりと分かることがしたかったんです。それで、環境を丸ごと変えてしまえ!と思って山口県へ移住して色々な仕事を経験し、最終的に農業に行きつきました。」

 

───最初から新規就農を目指していた訳ではないんですね。

 

「そうです。野菜を作って・販売して・お金になる。というお金の流れが見えやすいのが農業。これほどシンプルなものは無いと思って、農業を始めたのがきっかけです。」

 

───すごく分かりやすい動機!(笑)

 

「そうなんですけど、実際始めてみると土地勘もない移住先の地域で新規就農する気にはなれず…。生まれの関西で就農できる場所を探すようになったのですが、その過程でたまたま曽爾村の農林業公社の求人を見つけたんですよね。」

 

───新規就農を考えていたのに、農林業公社への「就職」が気になったポイントは何だったんですか?

 

「『卸売面の販路開拓』が前面に出ていた求人だったんですけど、山口県での研修中に感じていた一番の課題が、売り先が少ないことだったんです。

自分が将来的に農業で独立する際も売り先は絶対必要だし、売り先を1から作るよりかは先に繋がっていた方が良いかなと思い、売り先に関する川上から川下までを把握するために、まずは農林業公社に就職することにしました。」

 

───将来的な就農を見据えて、敢えて就職されたんですね。今もそのお気持ちは変わらずですか?

 

「野菜の流通に関わる業務を担当しているのですが、この業務に関わるなかで、今は就農の気持ちは無くなりました。というのも、今関わらせていただいている仕事が面白くなってきて、それを投げ出してまで就農したくはないんです。また、日々仕事をするなかで新規就農された方々、ご高齢の農家の方々のお話を聞くと、具体的な農業の大変さも実感させられ、思っていた以上に新規就農に向けた準備が必要なんやなって思って。なので、今は『新規就農する』という気持ちは一旦無くなっていて、農林業公社の仕事に貢献して土台を作っていきたいんです。」

 

───絶対に農業がしたい!という訳ではないと仰っていましたもんね。

 

「農家さんにとっては野菜が売れることが一番大事。売り先の確保は、野菜を作ることとは別に動かなければならないので、日中も畑で従事している農家さんにとって売り先の確保って、なかなかハードなんです。それを組織としてサポートすることができ、自分がその分野を担っていることは、農業をやっていた当時と通じる部分が大きいので、違和感がないのだと思います。どっちも中途半端といえば、そうなのかもしれませんが…(笑)ただ、どちらも中途半端にできる人がいるか?と聞かれると、実際はそんなに居ないと思うんです。」

 

農林業公社と日下部さん、日下部さんと農家さん、両者の気持ちやニーズを把握している良い意味での「中途半端」さを兼ね備えているからこそ、それぞれの橋渡し役になれる存在感があるのだと思いました。

実際に新しく農林業公社へ就職する方も、農業経験もある日下部さんと一緒に働けるのは心強いかもしれませんね。

 

───日下部さんの業務は主に「野菜の流通に関すること」とのことですが、今回の求人ではどのような仕事が任されるのでしょうか?

 

髙松「先ほどもお話させていただいた、『農作業受託』『直営圃場管理』『曽爾米ブランド化協議会運営』などに携わっていただいたり、あるいは卸売面の販路拡大を本格的に進める取組みに携わっていただくことも可能性としてあります。前者の場合は、パソコンを使った事務作業はもちろんですが、農作業をしていただくことも同時に必要となってきますので、農作業に関するノウハウ等もゆくゆくはインプットしていただくことになると思います。」

 

日下部「私は主に野菜の販売をやっていますが、並行してお米業務のサポートもしているんです。田んぼに行ったり、事務作業をしたり、野菜の梱包をしたり、お客様や生産者様とのコミュニケーションを取ったり…。大変だと感じることも時にはありますが、身体を動かす作業と頭を使う作業、それぞれ全然異なる作業をするので、自動的に気分転換が出来て楽しく取り組めています。『農作業受託』『直営圃場管理』『曽爾米ブランド化協議会運営』というお仕事も、屋外作業と屋内作業が半々になるので、バランス良くお仕事ができると思います。」

 

いつでも畑・農地に行ける服装に、農家さんのニーズを逃さずメモできるノートは常に持ち歩く

 

農林業公社の今とこれから

 

───農林業公社が立ち上がり約8年。組織内部はもちろん業務内容にも様々な変化が起き始めている状況だと思いますが、農林業公社の今後について想いがあればお聞かせください。

 

髙松「時の流れとともに、農家さんの高齢化も進む半面、新規就農の数も増えてきました。農業に関わる人の世代交代、新しい風が吹き始めていると感じているので、今のその良い流れを絶やさぬよう後押しをしていきたいし、地域の方々と良い関係性を築きながら地域に根を張ってやっていきたいです。

外から見ている農業と、中に入って見る農業にはギャップがあります。そのギャップに向き合いつつも、野菜・お米・加工品が売れていく土台を作ることこそが農林業公社の変わらぬ使命だと思います。」

 

日下部「『お米を作る、野菜を売る』はあくまで手段。農業を通じて地域を活性化することが、農林業公社にとって動かしようのないゴールです。新しくいらっしゃる方も、このゴールだけは意識してほしいですね。そのなかで、新しくいらっしゃる方のバックボーンやスキルを存分に生かして活躍してもらいたいと思っています。」

 

髙松「地道な仕事も華やかな仕事もありますが、公社が影となって地道に活動することで、農家さんにもその取組みが浸透していき、新規就農を志している人にも曽爾村の取組が耳に入り、将来的に曽爾村で就農を目指す人々が増え、曽爾村が豊かになっていく。そして曽爾村の野菜やお米を食べた人が曽爾村を知って好きになってくれる。そんな循環を創っていきたいですね。」

 

 

地域の農の文化を守り、発展させていくことは、驚くほど多面的なサポート体制が必要で、それは地道な作業の連続でもあります。

それでも、この仕事があるからこそ、喜ぶ人が存在する。

それは農家さんに留まらず、野菜やお米を手にする飲食店さんや消費者さんはもちろん、地域にとっても嬉しい結果に繋がるはず。

「農」を軸に地域発展へ貢献されたい方、ご応募お待ちしております。

募集要項

企業名

一般社団法人曽爾村農林業公社

募集職種

総合職

雇用形態

正職員

給与

月給233,400円~(経験等考慮し設定させていただきます)

福利厚生

・賞与年2回(2.25か月×2回)
・保険(健康保険、労災・雇用保険)
・住居(家賃補助)
・年金(厚生年金)

仕事内容

※面談の上決定します
・曽爾村の水田を守るための農作業受託作業及びコーディネート
・公社圃場の運営、曽爾米ブランド化協議会の運営
・その他農業振興事業、林業振興事業など

勤務地

奈良県曽爾村長野62

勤務時間

8:30~17:15(休憩時間 12:00〜13:00)

休日休暇

・週休2日制(土・日)
・年間休日118日(年によって前後します)
・祝日、夏季休暇、年末年始
・有給休暇:1年目10日(勤務開始半年後から付与されます)

応募資格

・運転免許(AT限定可)※取得予定も可

選考基準

・米作りなど地域農業の現場での経験や農業を多面的にサポートする業務を過去に経験された方、または関心のある方
・ワード、エクセル、パワーポイントなど基本的なPC操作が可能な方

求める人物像

・農山村での持続可能な暮らし方、働き方に関心のある方
・つくる人と食べる人の橋渡しをする仕事にやりがいを感じる方
・都市部で培った事務経験を農山村で生かしたい人
・日本の食や農業を、曽爾村での実践から前向きな方向に変えていきたい人

採用予定人数

1名

選考プロセス

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書類選考・⾯接等

採⽤
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
お問合せ先(SONI SUMMIT)
電話: 080-7208-4518
メール: soni.summit.official@gmail.com

その他

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