過去と未来に繋がる山林を健全に保つ林業のお仕事
業種
林業
募集期間:
2024.07.25~
曽爾村の四方をぐるりと囲む美しい山林。
どの集落を見ても、人々が住む家のすぐ裏手から、杉・桧が生い茂る森の光景を目の当たりにします。
整然と真っ直ぐに立ち並ぶ木々に、文字通り抱かれながら営まれる暮らしが、ここ曽爾村にはあるのです。
曽爾村の美しい景観作りの一端を担っている山林ですが、それは、かつて日本で林業が盛んだった時代、先代たちが未来の我々のために残してくれた木々でした。
しかし、時代の移ろいとともに林業は衰退し、先代が残してくれた木々の管理を担う人も徐々に減少。
「未来のために」と残された木々も、放置林となれば土砂災害や地すべり等の原因となり、荒廃した山林はせっかくの景観を損なうことにもつながりかねません。
───曽爾村の森を健全なものにしていきたい。
そんな想いで、15年程前に一人で立ち上がった男性がいます。
政木林業の代表、政木敏行さんです。
今回の求人は、曽爾の山林のために立ち上がった政木林業に関するお話です。
政木林業の成り立ち
───政木林業さんを立ち上げられてから約15年ということですが、政木さんは曽爾村のご出身なのですか?
「曽爾出身です。曽爾には高校が無いから、名張の高校に通っていたんですけど、高校卒業後も曽爾には戻らず、名張の建設会社や大阪・兵庫に出て仕事をしていました。兵庫ではアルバイトをしながら夜間の建築専門学校を出て、2級建築士を取得しました。」
───建築関係に従事されていたのですね。建築と林業…。「材木」という点で共通するものがありますね。
「叔父さんが大工だったので、小さい頃から木を使った仕事を間近で見ていたんです。原木から家になっていく木の流れを見ていて面白いなと思っていて、木材にはずっと興味がありましたね。」
───そこから、どういった経緯で曽爾村に戻ってこられたのでしょうか?
「高校から曽爾を出てずっと働いていましたが、長男なので『曽爾に帰らなあかんなぁ』とずっと思っていました。長いあいだ村外に居たものの、曽爾に対する思いは強く持ち続けていて、戻った暁には曽爾に関係のある仕事をしたいと思っていたんです。ただ、叔父さんのような大工という職業は自分には向いていないなぁと思っていて、現場に入って木を出す川上の仕事をしたいと思うようになったのもその時です。」
───そこから「政木林業」が始まるんですね。
「曽爾で独立する前に、隣市である宇陀市の菟田野地域の床柱や原木を扱う木材系の会社に勤めていたんです。そこでの経験を経て、約15年前に独立して、木を伐る素材生産の仕事を立ち上げたのが『政木林業』です。私が曽爾に戻ってきた時には、先人たちが植林してくれてから既に50~60年は経っていて、育林期はとうに過ぎ、管理しなくてはならない段階だったんです。
曽爾の森を健全な森として保ちたくて、伐った木をずっと地面に置いておくのではなく、できるだけ多く搬出するため原木市場に持って行ったり、チップ化してバイオマス燃料にしたりしています。」
───原木だけでなく、バイオマス活用までされているんですね。
「先人が植えた木を1本でも多く有効活用し、曽爾の森を健全なものにしていきたい、という一心です。50年100年と先に繋げていける誇れる仕事だと思っています。」
───独立されてからしばらくは、ずっと1人でやられていたのですか?
「最初は1人でやっていましたが、途中から知人にも手伝ってもらっていました。そこから、8年程前に村と協力して地域おこし協力隊を募集したんです。当時は、村としても山の保育の段階が過ぎたので管理をしなければならないという課題があったんです。表面的には分かりにくいですが、山に入ってみると荒廃している状況だったんですよね。
私としても、同じ危機感を抱いていて、木を適切に管理して山の風通しを良くする必要があると思っていました。村と政木林業、両者が曽爾の山に対して同じことを思っていたので、地域おこし協力隊で林業に従事してくれる人を探す動きに繋がりました。それで入隊してくれたのが、協力隊卒業後の今でも活躍してくれている加藤さんなんですよ。」
林業は不思議?異業種からの転職
───加藤さんは曽爾村移住をして9年目ですよね。協力隊で林業に従事し始めてから随分と長い年月が経っていますが、林業をやりたいと当初から考えていたのでしょうか?
「林業に行き着いたのは、単なる偶然です。僕はバイクが趣味なので、曽爾や吉野の山も目にする機会もたくさんあって、これだけ広大な山を人の手で管理しているということに少し関心があったんです。色々とデジタル化が進み便利になっている世の中で、すごく大きな山を相手に未だに人の力でアナログに木を伐るという仕事だと思っていたので、林業って不思議だなぁ、という興味を持っていました。」
───街中だと林業が実際に行われている現場を目にすることはまず無いですもんね。
林業に対して「不思議」という感覚をお持ちだったとのことですが、そこからどうやって林業に従事することに行き着いたのでしょうか。
「前職はイラストレーターだったんですけど、転職したくて何をしようか考えていたんですよね。一般的な会社の仕事も受けてみたのですが、なかなか思うようにいかず…。そこで、『一発林業でもやってみよう』と思い立ちました(笑)。」
───「林業って不思議だなぁ」という興味の芽が、その時パッと出たんですね!
「そうですね。最初は林業未経験者向けの研修制度『緑の雇用』で資格を取得してから、どこかの森林組合に就職して林業に携わろうかと思っていたのですが、転職時期と『緑の雇用』の受付時期がずれていたんです。そこで地域おこし協力隊の存在を知り、仕事だけでなく住宅の補助もあること等が、色々と0から始める自分としては条件が良く、林業ができる協力隊の募集を探し始めました。たくさん調べるなかで、徳島県と曽爾村での募集を見つけたのですが、面接の順番的に最初に曽爾で合格したので、曽爾に決めました。なので、曽爾で林業をしているのは、ただの偶然なんです(笑)。」
政木「当時は私自身も、森林組合と役場の方と一緒に面接官をやらせてもらっていました。5人の応募者の中から2人の採用予定でしたが、加藤くんのことははっきり覚えているね。スーツ着て眼鏡をかけた服装だったけど、『他の子と比べても動けるんちゃうかな』と、惹きつけられるところがありましたよ。」
───加藤さんは面接当時の記憶はありますか?
「第一印象は怖そうなイメージでした(笑)。林業に携わっている人って、自分の親世代の方々で『昔気質の親方』というイメージを抱いていたんです。」
政木「昔の職人さんなんて、肝心なことはちゃんと言うけれど、基本的には『見て覚えろ』でしたね(笑)。だから向上心がある人は伸びるんです。疑問を持って次に繋げる気持ちがあるかどうかが大事なんですけれど、加藤くんにはそれがあったんです。」
───最初は怖そうなイメージを抱いていたとのことですが、実際に働き始めてからはいかがでしたか?
「想像の遥か斜め上を行くくらい、最初から色んなことを事細かく教えてくれました。それと同時に即実践。『とりあえずやってみ』と。分からないことや出来ないことがあっても、その理由や理屈をしっかり教えてもらえていたので、最初に抱いていた『怖そう』というイメージとは、まったく逆の良いギャップを感じました。
素人の方って、右も左も分からないので、きっと萎縮してしまうと思うんです。ただ政木さんは、仕事の流れや理屈を『こうしたらこうなる』と丁寧に教えてくれたので、素人の自分でも動きの意味を理解しながら、次の動きを予測をしながら働くことができました。」
政木「そんなん言ったっけな?(照笑)」
───実際に林業を始めてみて、どんなお気持ちでしたか?
「協力隊の3年間はめっちゃ楽しかったですよ。ただ、最初の数か月はしんどかったです。技術が無かったので、ひたすらインプットの連続。慣れていない道具や山の急斜面で身体もしんどい状況でしたが、入った当時は28歳だったので何とか若さでカバーできました(笑)。
そこから半年程度で道具や環境に身体が馴染んできて…それからずっと楽しいです。
しんどい時期も含めて、仕事をやめようと思ったことは一度もないんです。出来ることもだんだん増えてくるし、もっと出来るようになりたい!という向上心は今も変わっていません。」
───林業というお仕事のなかで、一番「楽しい」と感じる瞬間はいつですか?
「最初に山を見て選木をする時と、一通りの作業を終えた最後の時です。
最初に現場に入って、第一印象がとんでもなく荒廃していた山でも、ちゃんと手入れをすると見違えるんです。それが気持ち良くて。『こうやったら良い山になっていくだろうな』『どんな山にしてやろうか』と考える楽しさが常にあります。また、そう考える裏側には、自分たちの稼ぎのためだけに木を伐るのではなく、木と山は持ち主である山主さんの財産なんだ、という意識が根底にあります。将来的に崩れにくい山となることを意識しながら、『もっと良くなるように』と仕事をするのが楽しいですね。」
───「最後の時」とは具体的にどんな時ですか?
「現場での作業が終わって、パっと後ろを振り返り、山に光が入っている瞬間です。これは何にも代えられない嬉しさですよね。そこから50~100年先の山の姿を想像すると更にやりがいを感じます。」
───「曽爾村の森を健全なものにしたい」というお気持ちの政木さんも、同感ですか?
政木「陽も当たらないほど管理が出来ていない現場をやり終えた後、そのビフォーアフターを見るのは本当に気持ちが良いですね。光が入っている姿を見ていると、まるで山が微笑んでいるように感じます。人の命には限りがあるけれど、木はずっとそこに立ち続けますからね。
山を所有されている山主さんにも喜んでもらえるように、という意識でやっているので、現場が終わって山主さんから感謝されることもありがたいし、やりがいですね。」
加藤「80年・100年・何百年という木を伐らせてもらうこともあります。自分が生まれていない時代から代々いろんな方が育ててくれた木を、何も関係ない自分が伐る。そして次、誰か知らない人が伐るための木を、きっと今自分が管理している。日々の作業の積み重ねが、未来の人に繋がれていくんだと、政木さんの言う『先に繋げていける誇れる仕事』って、こういうことなんだと感じる日々ですね。」
林業に従事する前は、そのアナログな仕事のあり方に漠然とした「不思議さ」を抱いていた加藤さんですが、林業に従事する当事者となった今は、「木を通して過去と未来を繋ぐ」という、時を超えた不思議な感覚に魅了されているようでした。
それこそが、林業の醍醐味なのかもしれません。
主な仕事内容と1日の流れ
政木さんと加藤さんそれぞれが、林業という仕事に対して、共通する誇りとやりがいを抱かれるなか、実際にはどのような作業をされているのか、具体的な仕事内容と1日の流れについてお伺いしました。
■仕事内容
①選木(山の状態を見て、残す木・切る木を選ぶ)
②作業道のルート踏査
③伐採
④枝うち
⑤運搬
⑥集積
⑦市場へ搬出
「かつては曽爾近隣にも木材市場がありましたが、時代の流れとともに市場の数も減少し、現在は桜井市の木材市場に持って行っています。
市場に持っていくのは建材等で使用できる原木ですが、伐った木の中には建材としては好ましくない材も。そんなときは、バイオマス燃料とするために木材をチップ加工してくれる工場へ材を運びます。」
■1日の仕事の流れ
8時前:現場入りMTG(当日のスケジュール・担当確認)
8時半:作業開始
12時:昼食
17時:終了、片付け
───現場では、何名で作業を分担されているのでしょうか?
「応援の方にも来ていただいて大体4人。その日によって、重機の運転担当、伐採担当、作業道作り担当などを振り分けています。少ない人数でフル回転ですわ(笑)。午前も午後もフル回転ですが、昼食は皆で木陰に入ったり、現場を流れる小川で頭や顔を洗ったり、毎日森林浴気分でリフレッシュしています(笑)。」
───現場作業を終えた後も、デスクワーク等はしていますか?
「現場の事業形態によっては書類仕事も発生しますが、事務所が無いので、書類作業をする時間・場所は人によって様々です。帰宅して作業する人もいれば、雨で現場に出られない日に作業をすることもあります。現場と書類仕事で自分自身がいっぱいいっぱいにならないように、バランスには気を付けています。」
───雨の日は現場に出られないんですね。
「基本的には月~土曜の勤務日を設けていますが、天候やその時の作業状況によって土曜の出勤有無は左右されます。平日に雨が続いていたら土曜は出勤しますし、逆に作業状況によっては、平日で晴れていても休みにすることもあります。休みが固定されにくい仕事ではありますが、皆それぞれの家庭や暮らしがあってこその仕事なので、皆の意見を聞きながら休みを決めるようにしています。」
───加藤さんはお休みの日は何をされていますか?
「平日の仕事終わりは身体が疲れ切っているのでゆっくり休んでいますが、休日は多趣味なので自分の好きなことをやれています。庭仕事をしたり、連休の時はバイクで遠出したり。『日本伐木チャンピオンシップ』というチェーンソー競技の大会にも2年連続で出場しています!」
これから林業を始めてみたい方へ
───ここ数年、東京や大阪、林業が盛んな自治体で林業に関する就職説明会やフェアが開催されているのをよく目にします。「林業をやってみたい」と、林業に興味を持つ人も実際多いようですが、お二人はどんな方と一緒に働きたいですか?
政木「身体を動かすのが苦にならない、林業に少しでも興味を持っている、という方には是非チャレンジしていただきたいですね。夏場は炎天下できついし、冬も寒さが厳しい時もありますが、しんどい思いして身体を動かした分、達成した時の喜びもひとしおです。」
加藤「せっかく林業に興味を持っていただいても、『合わなかったら他がある』と始めから退路を持ってしまっていると、きっと続かないと思います。体力的にきついのは間違いないです。いくら体力に自信があったり自然が好きでも、体力的にしんどいことが大きな理由で、逃げ道があったらそっちに行ってしまうんです。しんどい時期を乗り越えて、最低でも1~2年は続ける気概で来てほしいですね。やってみないと分からないのはどの仕事も一緒。林業始めて続けてみたら、楽しいかもしれんで!」
───林業初心者の方でも安心して現場仕事をやっていけるものなのでしょうか…?最初はどうしても不安が付き物だと思うんです。
加藤「伐採や重機運転に関わる基本動作のレクチャーはもちろんしますのでご安心ください。基本を教えながら、安全な範囲で実践もやってもらいます。その時は必ず横に付いているし、危ないときは止めます。私たち自身もたくさん実践させてもらって、たくさん失敗もしてきました。失敗から学ぶこともあるので、個人個人の感覚がしっかり育って不安が払拭できるまで、たくさん経験を積んでもらいたいですね。」
───身体的なしんどさを越え、沢山の経験を積んでこそ見られる素晴らしい景色が林業には広がっているんですね。
政木「長い月日を経て木も一人前になる。林業に携わる人も同じです。
林業は先人たちの木を受け継ぎ、何百年も先の未来に繋いでいく誇らしい仕事だと感じていただけると、嬉しいですね。」
───曽爾村の森を健全なものにしていきたい。
そんな思いを胸に一人で立ち上がった政木さんの横に、今は加藤さんがいます。
お二人とも、ご自身の仕事にやりがいと誇りを抱いている根っからの林業人。
そんな政木さんと加藤さんの横に一緒に並ぶ新しい人も、きっとその人なりの林業の醍醐味を見つけられる人なのだろうと、勝手に未来を想像してしまいました。
木を通して過去と未来を繋ぐ仕事、林業。
ロマン溢れる仕事です。
ご応募お待ちしております。
募集要項
企業名
政木林業
募集職種
林業
雇用形態
正社員
給与
184,000円~345,000円
福利厚生
・昇給あり
・賞与年2回
・保険(労災)
仕事内容
・山林の管理
・作業道の開設
・木材の伐採、玉切り、搬出等
※資格の必要な山林作業用重機や刈払機、チェーンソーの取り扱い資格のない方は、入社後に資格を取得していただきます。(費用は会社負担)
勤務地
曽爾村内の山林等
勤務時間
8:00~17:00(休憩時間 12:00〜13:00)
休日休暇
・週休2日制
・隔週土曜日は休日
・夏期、年末年始に連休あり
※荒天時は休日になることもあります。
応募資格
・普通自動車運転免許(AT限定不可)
・準中型自動車免許(あれば尚可)
選考基準
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求める人物像
・山林業務の経験(あれば尚可)
採用予定人数
1名
選考プロセス
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メール: soni.summit.official@gmail.com
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