──そんなお二人が運営する「プロクルードローンスクールKOS奈良校」についてお伺いしたいのですが…。最初は空撮と農業の事業を考えていたんですよね?なぜスクール事業なのでしょうか?
大森「『ドローン』といっても、当時の私たちには知識も経験も本当に何も無くて…。ネットで調べまくってドローン事業で成功している会社にひたすら連絡を取って色々と教えていただいていたんです。そして徐々に知識も身に付いてくるなかで、『あれ…農業ドローンって実はそんなに儲からないのでは?』ということに気が付いていきました。」
──それは怖い気付きですね…(笑)。具体的に、どんな理由でそう思われたのでしょうか?
西谷「農業用ドローンがビジネスとして活躍できるには、『平地』で『それなりに広い農地』じゃないと採算が合わないんですって。調べたところ、山間地や飛び地が多い奈良の農地環境は、区画整備状況や水稲面積など全国ランキングで下から見てすぐに記載があるくらい…(苦笑)。厳しい状況が判明したにも関わらず、既に農業用ドローンを買ってしまっていたので、負の遺産からのスタートでした。」
大森「農業用ドローンって、そもそも農薬を撒く7~9月の3か月間しか需要がないんです。この短期間で年間の売上を確立できるならビジネスとして成り立ちますが、環境条件も悪いので絶望ですよ…(笑)」
──たしかに。でも農業用ドローンは購入してしまった…。
西谷「そう…(苦笑)。逆境ではありましたが、せっかく農業用ドローンを持っているので、とりあえず全国の農薬散布を取りまとめている団体にエントリーして、他県の現場で農薬散布の経験を積みに行ったりしました。当面はメイン事業ではなく、サブでやっていこうという方針ですね。」
──一方で、空撮事業はどうですか?
西谷「空撮してほしいというお客さまをどう見つけるか?という、ニーズ発掘の課題と、1撮影につき10万円くらいの料金を支払ってもらえるか?という価格面の課題に直面してしまいました。」
大森「映像制作会社が既にドローン撮影には着手しているので、私たちのように実績もなく、『ただドローンを持っているだけ』という会社に空撮依頼が来る可能性ってそもそも低いんですよね。空撮と農業の現状を把握したあたりから、スクール運営やインフラ点検・測量の可能性を検討し始めました。」
──インフラ点検と測量?いわゆる、土木業界で行われている作業のことですか?
西谷「そうです。でも実際は、映像会社が空撮を既にやっているのと同じように、土木事業者が既にドローンの活用をしているんですよね。土木業界の素人である私たちが参入するには、専門的な知識の習得から始めなければならないし、時間も労力もコストもとてもかかってしまう…。そこで、ようやく『スクール運営』に辿り着きます。」
──色々と寄り道をしながら辿り着いたのが、スクール運営なんですね。それでは、「プロクルードローンスクールKOS奈良校」について詳しく教えていただけますか。
西谷「プロクルードローンスクールは、もともと滋賀県に本校があります。そちらで私たちも講習を受け、講師の資格を取得し、KOS奈良校を開校したという流れになります。
スクールは、滋賀・大阪・兵庫・京都・愛知・奈良に展開していて、グループ卒業生は3,500名以上!それぞれ校によって運営母体や講習料金等が異なるんですが、KOS奈良校に関しては、私たち2名が講師を担当し、受講料も業界トップクラスの低価格で提供しています。」
──KOSモバイルさんが運営しているから、「KOS奈良校」なんですね!そもそも、スクールの需要ってあるのでしょうか?
大森「それが、結構あるんです。というのも、ドローンは最近の事故の増加に加え、農業・インフラ・物流・災害対応などの需要が急速に高まってきており、2022年12月から『無人航空機操縦者技能証明制度』という、いわゆるドローンの国家資格制度が導入されたんです。その国家資格を取得するためのスクールが、プロクルードローンスクールKOS奈良校というわけです。」
──なるほど!国家資格が取得できるスクールなんですね。ドローンの操縦は国家資格が無いと操縦できなくなっている、ということですか?
西谷「国家資格が導入されたといっても、今はまだ資格がなくてもドローンは飛ばせてしまうんです…。資格の有無に関わらず、『航空法』や『小型無人機等飛行禁止法』にもとづいて、趣味や個人の撮影の範囲で操縦することは無資格でも可能です。でも、法律の詳細を把握しないで操縦している人も実はたくさんいるんです。いわば無法地帯状態なんですよね…。」
──たしかに…。さっきから難しい言葉が飛び交っていて、よく分からなくなってきています…(苦笑)
大森「まさにそれなんです!実際にルールを知らずに(あるいは無視して)飛ばしている人のなかには、『ルールの存在はなんとなく知っているが、よく分からない』『ルールが厳しいから敢えて目をつぶってしまっている』という方も多いんです。そういった方のためのスクールでもあります。国家資格の免許を取得し、しっかりと安全にドローンを飛ばせるようになってもらい、自身の趣味だけでなく仕事としてもドローンを扱える人材を育てていくことがスクールの目的です。
初心者の方はもちろんですが、今まで無資格あるいは民間資格を取得してドローンの操縦をしてきた方々が学び直せる場としても、スクール運営をしています。」
──実際にスクールではどんなことを学べるのでしょうか?
西谷「初心者の方は、4日間の講習で国家資格(技能証明)が取得できます。(ライセンス発行には学科試験、身体検査が必要です。)既にドローンの飛行経験がある方や民間資格を持っている方は、2日間のみの受講で資格が取得できます。」
──4日間ではどんなことをするんですか?
大森「最初の2日間で飛行スキルを身に着けていただき、残りの2日間で国家資格取得を目指していただく4日間のコースになっています。主に①学科講習と②実技講習の両面でレクチャーをしています。」