──3年間の二拠点生活のアドバンテージもあったかと思いますが、小川さんは移住して間もないですが、とても地域と馴染んでいますよね。
「僕の座右の銘に、『地を離れて人なく、人を離れて事なし、故に人事を論ぜんと欲せば、先ず地理を観よ』という吉田松陰の言葉があるんだけど、これは『土地を離れて人々の生活は成り立たない、また、人を離れて物事が行われることもない。だから、まずその地域の自然の状態を念入りに見なければならない。』という意味なんだよね。この言葉が好きだからこそ、地域に馴染んでしっかりと入り込んでいくためにも、移住半年で『村入り』をしました。」
✦村入り(むらいり):正式にその集落の一員になること。村入りすることで役が与えられ自治会の一員となる。数年かけて村入りするケースが多く、村入りするか否かは総代さんと相談できる。
──移住半年で村入りされたのは割と早い事例ですね。
「本当は移住後すぐにでも『村入り』したかったんだよ!でも、移住してからしばらくの間、地域の方々から『別荘に住む書家の人』と誤認識されていたようなんだよね(笑)
別荘ではなくちゃんと住んでいるし、村入りもしたいって近所の方へ春先に相談したら、『総代さんや集落の人が集まる冬の食事会・お祭りで正式に小川さんを紹介するから待ってて』と言われ、そこから半年経ってようやく、冬になって村入りできたの。」
──移住半年で村入りができたのも、キャンプ場に住み込みで働いていた2~3年の期間があったからこそ、地域の人から『この人は地域に慣れる助走期間が終わっている人』っていう風に見てもらえたのかもしれないですね。
ちなみに、近所の方が「別荘の人」と誤解された要因は何だったのでしょうか?
「半年に一回くらいの頻度で東京に戻っているんだけど、その一回が長期の滞在になることが多いから、結構な頻度で東京に帰っているイメージがついていたのかもしれないね。あとは、『誰が奥さんか』って僕を巻き込んで近所の人同士で議論が起こるくらい色んな人を曽爾に招いて家を出入りしているから、余計にそう思われたのかもしれない…(笑)」
──たしかに。小川さんのお家は常にゲストで賑わっている印象です。
「僕の『いたずらな曽爾暮らし』の途中経過を皆に見てほしいからね(笑)
あとは、『じゃらん』とか、『B-1グランプリ』とか、日本中を飛び周り日本中の美味しいものを知っている小川が『なぜそこ?』って皆が思うらしいのよ。『曽爾』って読めないしどこそこ?って。あの小川が終の棲家に古民家を買った村ってどんなとこ?って。
そうなると、曽爾でこんな暮らしをしているんだよって、SNSに思わせぶりな投稿をしてみたり、僕のイタズラ魂に火がついて、色んな人を招待して曽爾を楽しませてあげたくなっちゃうのよ。」
──ゲストがいらしている際、ご近所の方々の反応は?
「ありがたいことに、子連れの来客があった時に、近所の方が『小川さ~ん。里芋いる?大根いる?』って、採れたての野菜を差し入れてくれることがあるんだけど、子供がとても美味しそうに食べるんだよね。近所の方との何気ない交流や、その場で食べた野菜が新鮮で美味しいとか、こういう何気ない瞬間に田舎暮らしの価値があるなって思うね。」
──逆に、気を付けなければならないな~と感じたことは?
「敢えて言うならば、必ずどこかで見られているから油断できないという点かな。『このあいだ一緒に車に乗っていた人誰?』とか、『この前あそこで何してたん?』とか…。とにかく油断できない!(笑)悪いことなんてしないけど『どこかで誰かが見ている』という田舎ならではの微妙な緊張感があるかもね。分かりやすく言うと、渋谷のスクランブル交差点。あそこは横断歩道を渡る人が1回に千人以上って言われているんだけど、曽爾村の人口が1,300人弱なので、スクランブル交差点ですれ違う人ほぼ全員が顔見知り、知り合い、親戚という感覚かな(笑)
そういった緊張感はあるけれど、でも移住者に対して曽爾の人って基本的には寛大だよね。良いも悪いも受け入れようとする姿勢が、ある程度ベースにある感じがします。」